●ゴリオ爺さん(上)
●バルザック 作、高山 鉄男 訳
●岩波文庫 321ページ
●初版 1997年
あたりまえですが、初版 1939年(70年前)の 『ボヴァリー夫人』 に比べるとかなり読みやすい訳です。
これまた、あたりまえかもしれないけれど、登場人物のフルネームその他呼称を覚えていないとなにがなんだかわからなくなる。
苗字だったり、名前だったり、愛称だったり、あだ名だったり・・・。
--- あらすじと感想 ---
野望を胸に田舎町からパリに上京し学生生活を送るラスティニャック。
彼が住まう下宿ヴォケ館の個性的で貧しい住人たち。彼らとは対照的な社交界の艶やかな人々。
社交界の中で立身出世をはかろうとするラスティニャックに不敵な笑みと智慧をちらつかせる下宿人ヴォートラン(実は同性愛者)。
父親に見捨てられて貧しい暮らしを強いられるヴィクトリーヌ・・・。
二人の娘を上流社会に嫁がせたが故に苦悩に満ちた生活を送る隣室のゴリオ爺さん・・・。
とさまざまな人間模様が描かれる。
上巻ではラスティニャックの放埓と堕落した心中を察したヴォートランが彼を悪の道に巧妙に誘い込むところで巻を閉じる。
前回読んだ 『ボヴァリー夫人』 とは異なり、この『ゴリオ爺さん』 の前振りにはスリルがあり、巧妙な処世術や教訓なんかも織り込まれていたりする。
ちょっとした名言や名ぜりふが含まれているけれど、うっかり読み飛ばしてしまうので読解力が試される・・・私は落第だ。
ストーリーは、フローベールの写実主義のようなまったりした美しい描写は無いけれど、スピード感のある展開で進んでゆく。
上巻ではほとんど脇役のゴリオ爺さん、下巻ではどんな役割を果たすのだろうか。
そして、ラスティニャックは大きな野望を現実のものとすることができるのだろうか・・・。
感動の幕引きに期待しながら下巻を手に取る。
2009年8月12日水曜日
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