2010年2月19日金曜日

【読書】セルバンテス短編集

●セルバンテス短編集
●セルバンテス 著、牛島 信明 訳
●岩波文庫 375ページ
●初版 1988年

『ドン・キホーテ』の作者であるセルバンテスの残した短編から4編が選ばれています。

第1話 「やきもちやきのエストレマドゥーラ人」
第2話 「愚かな物好きの話」
第3話 「ガラスの学士」
第4話 「麗しき皿洗い娘」

このうち、第2話 「愚かな物好きの話」は『ドン・キホーテ 前篇』に挿入されています。

いずれも、短編というより中編にあたいする分量のものがたりですが、読みやすい訳と巧みなストーリー展開により、あっという間に読み終えてしまいます。

第1話は六十八歳の老齢の紳士が十三、四歳の娘をめとり、やきもちやきゆえに召使らとともに自宅に幽閉するものがたり。

第2話は妻の貞節を証明するため、親友に妻を誘惑するように説き伏せる物好きな青年の不思議なものがたり。

第3話は自分の体がガラスでできているという狂気にさいなまれた学士のシュールな運命をえがいたものがたり。

第4話は天使のように麗しい旅館の皿洗い娘をとりまく男たちと彼女の不思議な出生の秘密のものがたり。

どの話も読みやすく、語り口も軽妙で楽しめる内容ですが、
第2話 「愚かな物好きの話」と第4話 「麗しき皿洗い娘」がとても良くできたストーリーになっています。

特に第2話 「愚かな物好きの話」は夏目漱石の『行人』の模範となったそうなので、漱石ファンのかたも楽しめるのではないかと思います。

セルバンテスは、夏目 漱石だけではなく、
シェイクスピア、ドストエフスキイ、ジョイスなどにも影響を与えたとされていますので、それだけでも興味深いです。

第2話だけでも十分に楽しめると思いますので、だまされたと思って読んでみてください。


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