2010年2月7日日曜日

【読書】行為と妄想 私の履歴書

●行為と妄想
● 梅棹 忠夫 著
●中央公論新社 343ページ
●初版 2002年

本書はもともと日経新聞の「わたしの履歴書」に連載された記事をもとに、大幅な加筆訂正を加え2002年に文庫として出版されたものです。

梅棹 忠夫氏といえば、国立民族学博物館の
初代館長を勤め、1994年には文化勲章を、1999には勲一等瑞宝章受章を受賞された日本でも最高峰の学者です。

この『行為と妄想』は、その梅棹氏の自伝です。

幼少期の昆虫採集、旧制中、高時代の登山や探検、京都帝大時代の山岳会での活躍などプライベートな一面と、戦時中のモンゴル調査や万国博での活躍、国立民族学博物館設立などの学者としての功績が時系列にそって語られます。

『知的生産の技術』、『文明の生態史観』、そして最近では『日本文明77の鍵』といった著書で梅棹氏のユニークな視点に大いに興味を持ちましたが、これらの著書が生まれた
背景を知ることができ、さらに興味を抱きました。

そして、これらの著書をはじめ、氏のさまざまな功績は、猛烈なスピード感と圧倒的な行動力の産物であることがわかりました。

偉大な功績を残しながら、これらの功績を自慢することもなくさらりと語っているところは心から尊敬してしまいます。

最も印象的だったのは、『荘子』の「
櫟社の散木」(れきしゃのさんぼく)という節です。

大工の棟梁がマサカリをかついだ弟子をしたがえて祠(ほこら)のそばを通りかかった。祠の後ろには巨大なクヌグ(
)の木がおおい茂っていた。棟梁はその木に見向きもしないで通り過ぎてしまった。後を追いすがった弟子が「こんな立派な木は見た事がない、なんでこんなりっぱな木を切らないで通り過ぎるのですか」とたずねたところ、棟梁は「ばかものめ、あの木はなんの役にもたたないから切られずにあんなに大きくなったんじゃ」という話。

梅棹氏はこの
櫟社の散木」のようにひとの役にはたたずに好きなことをして生きていきたいという。

大きな功績を残したにも関わらずこの謙虚さはいったどこから来るのだろう。

漢字が少なく、平易な日本語で文章を書く梅棹氏の著書はどれも読みすいが、そんなところにも謙虚さと思いやり、優しさがうかがえる。

これからも少しずつ梅棹氏の著書を読んでいこうと思う。

目標は『
梅 棹忠夫著作集』全23冊・・・

<wikipedia : 梅棹 忠夫>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A2%85%E6%A3%B9%E5%BF%A0%E5%A4%AB

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