2009年7月27日月曜日

【読書】朗読者 (映画 『愛を読むひと』 原作)

●朗読者
ベルンハルト・シュリンク 著、
松永 美穂 訳
●新潮文庫 258ページ

映画 『愛を読むひと』の原作である 『朗読者』を読み終えた。

映画を観て、その素晴しいストーリーに感動し、原作を手に取った。

先に映画を観ていたので、映画のシーンが頭をよぎることは禁じえず、読書の邪魔をした。

イマジネーションのスイッチがオフになってしまったようだ。

しかし、映画には描かれていないシーンや登場人物の心理描写に触れる部分では大いにイマジネーションを膨らませて読んだ。

結末を知っているので、映画のようにラストで泣くようなことは無いだろうとたかをくくっていたが、最後のページを読み終えたときには涙が溢れてきた。

それは、映画を観終えた時に疑問だったハンナの決断の理由について少し理解できたような気がするからだ。

その理由のひとつは、この小説の最後の2段落目に記されているように思う。


「・・・傷ついているとき、かつての傷心の思い出が再びよみがえってくることがある。自責の念にかられるときにはかつての罪悪感が、あこがれやなつかしさに浸るときにはかつての憧憬や郷愁が。ぼくたちの人生は何層にも重なっていて、以前経験したことが、なし終えられ片付いたものとしてではなく、現在進行形の生き生きとしたものとして後の体験の中に見出されることもある。ぼくにはそのことが充分理解できる。にもかかわらず、時にはそれが耐え難く思えるのだ。ぼくはやっぱり、自由になるために物語を書いたのかもしれない。自由にはけっして手が届かないにしても・・・。」

ハンナもまた自由になりたかったのではないかと思う。


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