●日本文明77の鍵
●梅棹 忠夫 編・著
●文芸春秋 269ページ
●初版 2005年
本書はもともと1980年代前半に、外国人向けに英語で製作されたものを日本人向けに翻訳したと言うちょっと変わった経緯にあります。
内容は2000年代前半の新しい事実に基づき加筆訂正されていますので、2010年の現在においてももちろん有益な内容になっています。
もともと外国人向けということなので、日本人にとっては当然わかりやすい内容となっています。
また、日本人の観点ではなくヨーロッパ諸国をはじめ、世界各国の視点で日本について解説されており、教科書で習った日本史とは趣を異にしています。
テーマは全部で77個あります。群島、森林、四季、世界最古の土器、・・・律令、奈良、京都・・・江戸、将軍・・・鎖国、憲法、地震、広島、カメラ、コピー、ニュータウン、情報 など
外国人に日本を説明するための解説書のようなものは多数あり、過去に私も手に取ったことがありますが、教科書的で冗長な説明に辟易したものです。
その点、この本では教科書的な冗長性や杓子定規な記述が廃され、平易で簡潔でありながら好奇心を十分満たす内容に整理されており、きわめて読み易くまとめられています。
この書籍で興味深かった点をいくつかあげてみます。
・土器が発見されたのは日本がもっとも古く、最新の最も正確な測定方法で1万6523年前と計測された。
・奈良の法隆寺(聖徳太子の私寺)は現存する世界最古の木造建築であり、現在も宗教活動を続けている。
・今日の日本企業には、会社の一大事に社員一同心をあわせて奔走するとおいった気風があふれている。それは、江戸時代の藩という組織体から受け継いだ伝統である。
・取締役、重役などの企業の職名には、江戸時代の藩の役職名がそのままいきている。
・現在のデリバティブ商品のひとつである先物取引は江戸時代の大坂で誕生した。
・1480年から1941年までに世界各国が体験した戦争の回数は、イギリス78回、フランス71回、スペイン64回、ロシア61回、オーストリア52回、イタリア25回、ドイツ23回、アメリカ合衆国13回、日本9回。と、ヨーロッパ諸国がいかに戦争とともに発達したか、そして日本がいかに戦争と縁が少なかったがわかる。(島国という孤立した環境と鎖国政策によるものと思う)
・世界有数のカメラ大国日本の一因には、軍事技術としてのレンズ製作技術が高いレベルにあったことがあげられる。これらの技術とメカトロニクスの融合によりカメラ製造技術が高いレベルに達し、量産化をへて広く市民に行き渡ることとなった。
・男神と女神による「国生み」の神話をはじめとして、日本の神話は性と生殖のモチーフにあふれている。『古事記』には、性交、性器を含む直接的な性描写のセンテンスが35箇所あるといわれている。
などなど、枚挙にいとまがない。
日本人として知っておきたい知識をこのような新書の形でシンプルかつコンパクトにまとめたところは梅棹 忠夫氏の大きな功績だと思います。
この書籍を読むことにより、日本についての曖昧な知識を正すとともに新しい知識を得ることができます。
日本史が得意な方にとっても新鮮な発見が多数あると思います。
グローバルな時代の日本人にとっての必読書と言ってもよいでしょう。
★★★★★のオススメです。
梅棹 忠夫氏の著書ではこの他に『知的生産の技術』、『文明の生態史観』というのを読みましたが、いずれも目から鱗の良書です。いずれご紹介したいと考えておりますが、いつになるかわからないので、ご興味のある方はぜひ手にとってみてください。
梅棹 忠夫氏も今年で90歳をお迎えになります。お元気なうちになんとかお会いできないものかと考えています。
wikipedia : 梅棹 忠夫
2010年1月30日土曜日
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