●脳はなぜ「心」を作ったのか (「私」の謎を解く受動意識仮説)
●前野 隆司 著
●岩波文庫 235ページ
●初版 2004年
3 年ほど前に、タイトルに惹きつけられてこの書籍を買いましたが、他の30冊あまりの書籍とともに長い間部屋の片隅に積み上げられたままとなっていました。
部屋に入るたびに気にはなっていたのですが、心の中で「無理」、「今は読めない」とつぶやくもうひとりの私・・・。
最近は小説ばかり読ん でいたので、ちょっと気分転換のつもりで手にとってみました。
もうひとりの私にはしばらく我慢してもらうことにしました。
やはり、『脳はなぜ「心」を作ったのか』 という好奇心をそそるタイトルが素晴らしい。
形而上の問題を科学の視点で解明する・・・ちょっと カッコイイ。
でも難しそう・・・。
そして、好奇心が赴くままにページをめくってみました。
意外と読みやす い。難しくない。面白い・・・。もっと早く読めばよかった。
もっとも興味を引いたのが次の事実です。
たとえば、人間が指を動かすとき、私たちは自分自身が指令して
指を動かしていると考えている。しかし、実際はその0.35秒前に
無意識下では指を動かす指令が出されている。自分自身が指令
しているというのは人間の錯覚にほかならない。
これが『心』や『意識』の謎を読み解くひとつの鍵となります。
もし、この事実に興味をもち好奇心を刺激されたり、『心』や『意識』の謎について知りたいと思ったのであれは、この書籍を読むことを強くオススメします。
前半は科学者らしく論理的な手順で『心』、『意識』、『クオリア』などの謎を解いていきます。
ロボット研究者、理工学部教授という著者独自のユニークな視点での謎解きはなかなか気持ちよくいさぎよいです。
後半は、ロボットにも心を持たせてみたり、人間以外の生物にも人権を求めたり、夢はあるけどちょっぴり現実離れしている部分があるのも事実です。
また、形而上の問題としての『心』とは何か?、なんのためにあるのか?、どこにあるのか?については結論を見出すことはできていません。
古来から多くの哲学者によってなされてきたこの謎解きに、この書籍が答えるというのはちょっと期待のし過ぎであり荷が重いというものでしょう。
しかし、『心』についての知的好奇心を十分に満たしてくれる大変良い書籍であるとことは間違いないです。
続編として『錯覚する脳―「おいしい」も「痛い」も幻想だった』が出版されているそうですが、なんとなく想像できます。
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