●サミング・アップ
●モーム 著、行方 昭夫 訳
●岩波文庫 385ページ
●初版 2007年
『月と六ペンス』、『人間の絆』を読み終えて、次に読む作品を何にしようかと考えていたのですが、Amazon のレビューなどを参考にしつつ、この『サミング・アップ』を読むことにしました。
晩年にモームの記した自省録的なエッセイ集です。
小説作法や芸術について熱く語ったり、『月と六ペンス』、『人間の絆』が誕生した経緯などが語られ、とても興味深い内容でした。
モームの宗教や神、哲学、「真」、「善」、「美」についての考えには共感を覚える箇所が多々あり、感動を覚えました。
その昔、私が小学生で、初めて宇宙の存在を知ったとき。宇宙の外に何があるのかとても興味を持ちました。そして、宇宙の外のまた外には何があるのかと思い をめぐらせました。もし「なにもない」のが答えだとしても、「無」の概念は理解できませんでした。この時、宇宙の創造主の存在としての神の存在を認めざる を得ませんでした。
そんな時父は「それは哲学の問題だ」と教えてくれました。そのとき初めて「哲学」というものの存在を知りました。
モームはこう語っています「宇宙の・・・根源の創造の行為をなしたのは何であったのか、・・・創造主の存在を考えるのは避けがたいことのように思われ た・・・宇宙のとてつもない大きさを考えれば、全能の存在以外考えられなかった。」
しかし、私と違う点が以下の部分にありました。私の拙劣な考えでは及ばなかった部分でした。
「しかしこの世には悪が存在するため、この存在が全能かつ全善であるはずがないという結論に至らざるを得ない。全能である神は、世の悪の存在を許したこと で責められて当然であり、そういう神を尊敬し、礼拝するのは不合理である。」というのがモームの考えです。
(カラマーゾフの兄弟でイヴァンが無心論者となったのも同じような理由であったと思います。(『謀叛』の章))
私は「善も悪も、美もそうでないものも、真も偽も全能主がつくりたもうたもの」と考えていたのです。
しかし、「全能の存在以外考えられなかった。」という部分は私の考えと一致しているので、これは私だけではなく万人共通で認識せざるを得ない事実のように 感じました。
ついながながと引用が続きましたが、とてもいろいろなことを考えさせてくれる名著であると思います。
文豪モームといえども私のような凡人と同じようなところでつまづき、悩んだ痕跡を見つけることができたので、私の人生もまんざらではないのではと思い至り ました。
訳が、素晴らしく読み易いのと、章が細かく区切られていて、忙しい人でも難なく読み進められるので、是非ともオススメしたい一冊です。
2010年4月11日日曜日
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