●雨・赤毛
●サマセット・モーム 著、中野 好夫 訳
●新潮文庫 177ページ
●初版 1959年
モームの記した短編の中でも特に有名な『雨』、『赤毛』の2編と『ホノルル』の3編が収められています。
短編諸説の歴史は意外と短く、その流派は2つあるそうです。
ひとつが、ロシアのチューホフ流で「情緒的でひとつのムードとか人生の漠たる印象を伝える」のに対して、もうひとつはフランスのモーパッサン流に「理知的で話の面白さを身上としている」というものです。
前者は話の盛り上がりなどがないのに対して、後者には起承転結があり最後に落ちがあるのが特徴だそうです。
モームの短編は後者に属するそうです。
知らぬ間に読者を虜にするストーリーテリングは長編小説と同じような味わい深いものがあります。
人間の理性をも狂わせてしまうほど激しく降り注ぐ南海の雨の魔力を描いた『雨』、おとぎ話のようなロマンチックな恋物語と現実的な結末の乖離が読者の意表をつく『赤毛』、ホノルルの原住民の持つ不思議な魔力を語る『ホノルル』。
いずれも最後の落ちまで読者を釘づけけにする面白い作品ばかりです。
日本に初めてモームを紹介したという中野 好夫氏の訳は1959年ととても古いのですが、古さを感じさせずすらすらと読めてしまうところも魅力です。
2010年4月18日日曜日
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