●コスモポリタンズ
●サマセット・モーム 著、龍口 直太郎 訳
●ちくま文庫 382ページ
●初版 1994年
1924年から1929年の間にアメリカの雑誌『コスモポリタン』誌に掲載された短編29編が掲載されています。
アメリカの雑誌は、巻頭に物語の冒頭部分と挿絵をカラーで掲載し、「続きは○○○ページを読んでください」というふうに広告の掲載されたページに誘導するという手法を用いることが多いそうです。
冒頭の部分だけ読んで、忘れられてしまう可能性が高く、作家としてはあまり喜ばしい手法ではないそうです。
そこで、モーム先生の場合は特別に、巻頭のカラーページに物語の全篇を掲載することが許されたようです。
ただし、挿絵とあわせて見開き2ページというのが条件で、きわめて少ない文字数で物語を書かねばならなかったそうです。
余分な副詞や形容詞は極限までそぎ落とし、起承転結のあるまとまった面白い物語を書かなければなりません。
この条件はとても厳しかったそうですが、文章を磨く良い鍛錬の場になったとモーム先生はおっしゃっています。
モーム先生曰 く、「私たちは文章にちょっとした調子をそえるという理由で、不必要なことばを書くことがよくある。意味の上では必要のないことばは一語も使わないで文章の調子をとってみることは、なかなかためになる修行であった」と。
こういう説明を聞くと、とても味気ない物語なんじゃないかと思ってしまいますが、そこはモーム先生、技の見せ所とばかり、少ない文字数の中でもとてものびのびと物語を展開してゆきます。
一話が7~14ページ程度に収まっています。
私がもっとも面 白いと感じたのは、「落ち行くさき」という物語です。まるで落語を聴いているような「落ち」に思わずにんまりしてしまいました。
読み終えて思わずにんまりとしてしまう物語りもあれば、見事な「落ち」に「やられた~」と言わしめるもの、ジーンと余韻の残るもの、さまざまな物語があります。
ちょっとした時間のチョイ読みにぴったりなすばらしい短編集です。
2010年4月25日日曜日
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