2010年4月24日土曜日

【教養】NHK ハーバード白熱教室

NHKの「ハーバード白熱教室」がとても面白いです。
http://www.nhk.or.jp/harvard/

『倫理』という答えのない形而上の問題について、ソクラテスの用いた対話方により学生と対話しながら講義を進めると言う。とても興味深い内容です。

余談ですが・・・。

第一回の講座では、軽く哲学の定義について触れていましたね。その中で、ソクラテス(プラトン)の『ゴルギアス』での名場面 「ソクラテス VS. カリクレス」の一文が紹介されていました。

人生のしかるべき時期に節度をもって学ぶなら哲学は可愛いオモチャだ。しかし、節度を越えて哲学を追究する なら破滅する。
」というものです。

「若者が哲学にうつつをぬかすのは結構だが、いいおっさんがいつまでも哲学するのはいかがなものか」というのがカリクレスの言い分ですね。

哲学なんかより、カリクレスやゴルギアスのように弁論術を身に付けるほうがよっぽど実用的じゃないかと。

しかし、人間が生きている以上、哲学を避けることはできません。「人は何のために生きているのか」、「何が善で、何が悪か」、「なぜ人を殺してはいけないのか」、「宇宙はどこまで続いているのか」、「なぜ宇宙があるのか」、「誰が宇宙を作ったのか」・・・、幼い子供から、余命いくばくもない老人にいたるまで、これらを避けて生きてはいけないですからね。

仮に本人が意識しなくとも、無意識の自分がこれら哲学の解を求めるのは、人間として避けることはできないですし。

人はより良く生きようとするので、意識しようがしまいが、哲学は避けて通れないのです。

そして、
サ ンデル教授は、哲学とは「あたりまえのことを別の視点から見ることだ」と言っていました。あたりまえのことを別の視点から見てもあたりまえには変わらないのだけれど、一度別の視点で見てしまうともう元の視点では見られなくなると。

すばらしい定義ですね。

こうやって、グイグイと生徒を哲学の世界に引き込んでいくサ ンデル教授。しびれました。

第1回は、学生の答えが思ったより平凡だったのですが
、アジア系学生の、「一人の命を救うより五人の命を救うという考えは、全体主義につながる」という答えは面白かったです。

人種の「るつぼ」アメリカならではの回答ですね。

次回に向けては課題図書を読む宿題も出されたので、第2回以降はビシビシと切れた答えが返ってくるんだろうなぁ。楽しみです。

ところで、先のカリクレスの主張にソクラテスがどう反論し、カリクレスやっつけたかについて興味をお持ちであれば、是非『ゴルギアス』をご一読ください。哲学書とは思えない平易で明快な文章はまるで小説を読んでいるようです。そして、ソクラテスの胸のすくような痛快なカウンターパンチを味わえます。

私は『ゴルギアス』でお腹いっぱいなのですが、サンデル教授は次回までに次の5つの書籍を読むように宿題を出しました。

・アリストテレス 『政治学』 (邦訳 中央公論新社)
・ジョン・ロック  『統治二論』 (邦訳 岩波書店)
・カント『道徳形而上学原論』 (邦訳 岩波書店)
・ジョン・ロールズ『A Theory of Justice(正義論)』 (邦訳(紀伊國屋書店)は絶版)
・ジョン・スチュアート・ミル『Utilitarianism(功利主義)』 (邦訳なし)

さすがはハーバード、厳しいな~。

余談が長くなってしまいましたが、講義の内容については以下のNHKの解説のとおりです。



【NHK解説】

創立1636年、アメリカ建国よりも古いハーバード大学の歴史上、履修学生の数が最高記録を更新した授業がある。政治哲学のマイケル・サンデ ル教授の授業「Justice(正義)」である。大学の劇場でもある大教室は、毎回1000人を超える学生がぎっしり埋まる。あまりの人気ぶりにハーバー ド大学では、授業非公開という原則を覆し、この授業の公開に踏み切った。ハーバード大学の授業が一般の目に触れるのは、史上初めてのことである。

サ ンデル教授は、私たちが日々の生活の中で直面する難問において、「君ならどうするか?何が正しい行いなのか?その理由は?」と、学生に投げかけ、活発な議 論を引き出し、その判断の倫理的正当性を問うていく。マイケル・ジョーダンやビル・ゲイツはその仕事で、すでに社会に貢献しているのになぜ税金を納めなけ ればならないのか。また代理出産、同性愛結婚、人権など最近のアメリカ社会を揺るがす倫理問題も題材となる。絶対的な答えがないこのような問題に、世界か ら選りすぐられた、さまざまな人種、社会的背景を持った学生が大教室で意見を戦わせる授業は、ソクラテス方式(講義ではなく、教員と学生との闊達な対話で 進められる授業形式)の教育の最高の実例と言われている。

世界の若き頭脳たちの堂々たるディベート能力、知的探求心、考える力など、世界 最高レベルの知的エリートの能力は、私たちに強烈な知的刺激を与える。さらには、宗教、人種、貧富など複雑に入り組んだアメリカ社会の構図を読み解く糸口 にもなる。また副音声による英語放送によって、今のアメリカの生きた英語を学ぶ絶好の教材ともなるはずである。

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